今日はなんだかおかしい。朝は家のグラスを割ってしまったり、右手の親指がなぜかいきなり痛くなってきたり、午後は一緒にライブに行くと約束した友人から連絡がきて、熱が出て行けないと言った。彼女の体調も心配しているが、チケットは買ったのではなく、インターネット予約だけでよかったとほっとした。
今日は水曜日。休日だろうが平日だろうが、渋谷にはいつもたくさんの人たちが集まっている。雑踏にまぎれ、私は道玄坂へ向かった。狭い道に入り、目の前にあるのはO-WESTの大きな黄色い看板。その向こうが今夜の会場、O-EASTの一階にある、Duo Music Exchange。
オープンニングアクトのRyu Matsuyamaの演奏の中、私はフロアに入って、左側の真ん中の席に座った。三曲は一瞬で終わってしまった。すぐにカジヒデキさんの登場。台湾人にとってカジヒデキという名は、馴染みのある名前ではないかもしれないが、彼は『渋谷系の貴公子』とも呼ばれ、渋谷系の中心人物の一人である。1989年に活動を開始し、最初はバンド『ブリッジ』のベーシストとしてデビュー。バンド解散後も個人活動を続けている。彼はスウェーデンが大好きだそうで、『ミスタースウェーデン』という愛称もつけられた。カジヒデキさんのライブを観るの、今日は初めて。青と白のボーダーにショートパンツのファッションスタイルは、彼の活発な音楽ととても似合う。今年48歳とは見えないぐらいな若い雰囲気が漂っている。「うららら〜」のコーラスがメロディーに合わせられた『アイスクリーム.マン』や夏ムードに満たされた『灼熱少女』。どれからも彼の朗らかな性格が伝わってきた。去年リリースされたアルバム『アイスクリーム.マン』に収録された曲だけでなく、ソロデビューした当時の曲もされた。十数年が経ってもこれらの曲は依然と生き生きとしている。そして今日のゲストトランペッターはTRI4THの織田祐亮さん。カジヒデキさんはMC中、レコーディングやライブでサポートとして織田さんを招くことも多いと話した。
転換後、ステージに現れたのはSchroeder-Headz。キーボーディスト.渡辺シュンスケによるプロジェクトで、ピアノ.ベース(玉木正太郎).ドラムス(千住宗臣)で編成されたピアノトリオ。名前の「Schroeder」は、アメリカの漫画『ピーナッツ』に登場する、トイピアノを弾く少年「シュローダー」が由来。2010年に1stアルバム『NEWDAYS』をリリース。そして2014年にVictor Entertainmentからリリースされた2ndアルバム『Synesthesia』は、台湾盤もあった。私のイメージの中の渡辺シュンスケさんはとてもクレイジーなキーボーディスト。演奏中の彼は立ったり座ったり、指や腕、さらにおしりでキーボードを弾いたりしていた。
そしてトリは本日の主役、JABBERLOOP。 真っ白な衣装を着用しているのはトランペッターのMAKOTOさん。チャック柄のジャケットにジンーズ、そして黒い帽子をかぶっているのはサックスのDAISUKEさん。大人な雰囲気が漂っている黒のジャケットを着ているのはキーボーディストのMELTENさんとドラマーのYOHEIさん。そしてベーシストYUKIさんの白シャツに赤い帽子とズボンの姿は、なぜか誕生日パーティーに登場するいちごのショートケーキに見えた(笑)。今年はJABBERLOOPが上京してから十年目。この夏から、いろいろな十周年記念イベントが行われた。八月に一部メンバーの地元.滋賀県でフェスを企画するや、その月末に東京でワンマンライブを開催。
今日のイベントもその十周年記念イベントの一つ。何曲が演奏された後、DAISUKEさんとMAKOTOさんのMC中にステージにキーボードがもう一つ増えた。「これを見れば、次は誰かって大体分かるよね?」と話したDAISUKEさんが改めて渡辺シュンスケさんの登場を紹介した。二人のキーボーディストが向き合い、バトルが始まったような風景に見えた。赤.メルテン対黒.渡辺シュンスケ。私が今最も好きなキーボーディストの二人がJABBERLOOPの曲を共演するなんて、これより贅沢なことがないのだろう。
中国語の四字熟語で「曲終人散」という言葉がある。意味は「出し物が終わったら人が帰って行く」。だが、日本のライブハウスにいるお客さんはなかなか帰って行かないようだ。ライブ終了後、たくさんのお客さんが物販コーナーに集まり、メンバーの姿が現れるのを待っていた。私は人混みの中を通って出口へ向かった。そこにチラシを配っている人がいた。よく見てみたら、その人は今日のアンコール曲の時に隣の会場から来たADAM atのキーボーディストだ。
渋谷スクランプル交差点に戻り、道を歩く人が減る気配がなかった。幸い、山手線は混んでいなく、座れた。私は気持ちを落ち着かせて、さっきまで目の前にあったことをもう一度、ゆっくりと味わっていた。
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